以前、10000回転のエンジンを制作して欲しいとの相談を受けた際に、その相談者の人が年収1000万円位の人であり、ある程度お金には余裕があるので、今使っている車のエンジンをチューニングして10000回転の超回転型のエンジンに出来ないか?と言った相談を受けたことがあります。
超回転型の10000回転のエンジンと言えば、有名な漫画である頭文字Dに出てきたハチロクに搭載されているグループAのエンジンを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、実際のそれに近いようなエンジンを制作して欲しいとのご相談になります。
これ、実現前提になると相当レベルの高い相談になりますので、普通の人だとそのような相談自体してきませんし、受ける方も相当な自信があるので、このような相談を受けると言った感じで、なかなか普通の環境では聞かれない相談内容になります。
現実問題として10000回転のエンジンを制作できるのか?
漫画とは違って実際に10000回転のエンジンを制作できるのかと言えば、すべての車でそれが出来る訳ではありませんが、ポテンシャルの高いプロダクションカー(一般車両)であれば、可能もあり、その場合は簡単ではないけど対応は可能になります。
ただし、ターボ車は最初から対象外になりますので、NA自然吸気型のエンジンを搭載している車で、ポテンシャルの高いエンジンを搭載している車、いわゆるスポーツカーに該当する車であれば、これまでの膨大なデータを確認して、エンジンの制作が可能であるか不可能かを専門のメカニックが行っていくことになります。
今回、相談者から持ち込まれた車は、スポーツカーであり、エンジンのポテンシャルからしてレーシングカーのエンジンを組んでいるメカニックが対応すれば10000回転のエンジンの製作が可能であるとの判断になり、それを相談者に伝えることになります。
これを聞いた相談者の方は大変喜んでくれるのですが、当然ながら条件などが沢山出てきていて、予算は一体どれくらいになるのか分からないし、テストを兼ねての制作になるため、エンジンを頻繁に下ろしたり組み直すことになることを伝えます。
その理由は、これまでのメカニックが所有しているデータ上は10000回転のエンジンを制作することが可能なんですけど、実際にそのエンジンと車両で10000回転で常用するエンジンやECU等の設定をしたことがないため、手探りになるからです。
いわゆる、レーシングカーの制作と大変近いイメージのエンジンチューンですので、予算もいくら掛かるかわからないし、制作にはとても時間がかかりますので、車もいつ納車できるかわからないので、それでいいなら対応可能といった話ですね。
年収1000万円では10000回転のエンジンを維持するのは極めて難しい。
一般的に年収が1000万円もあれば、何不自由なく生活出来ますから、ホンダのNSXとかポルシェ911GT3などの高額な車を購入しない限り、普通の国産車であれば、現金一括でも購入できるくらいの安定した稼ぎになります。
しかし、年収が1000万円の場合は手取りが700万円前後になり、そこから住宅費や生活費を捻出していくと、車に使えるお金というのはかなり少なくなってしまいますので、人によっては最大でも200万円位が限界になってしまうこともよくあります。
エンジンのチューニングで200万円もあれば、一般的なサーキット仕様のオーバーホールや各種セッティングも行えるのですけど、10000回転のエンジンなると流石に話が別格になってきますので、とてもエンジン製作まで到達できる収入ではなくなるわけですね。
ですから、この相談者の方に無理に10000回転のエンジン製作を勧めた場合、恐らくは経済的に無理が出てくるため、かなり早い段階で車を手放すことになる恐れがあるため、そのことを詳しく説明してから、超高回転型は止めたほうが良いことを伝えます。
その代わり、やるのであれば、限界までのエンジンチューニングは行なえますし、VProを使ってエンジンに合わせたセッティングをしながら車を作って行くほうが予算的にも現実的なので、そちらをお勧めすることになりました。
超高回転型の10000回転のエンジンは夢として消えてしまいましたが、無理をして車のチューニングをするよりも、金銭的に実現可能な範囲で楽しんだほうが末永く車に乗れることを考えると、この判断は間違っていなかったと思っています。